英語を聞いたときは分からなかったのに、スクリプトを読むと意味は分かります。それでも次の音声ではまた聞き取れないと、もっと聞けばいいのか、単語や文法に戻ればいいのか、迷うことがあります。
同じ「聞き取れない」でも、音から単語を見つけられないのか、表現の意味を知らないのか、話が進む速さについていけないのかで、確かめたいことは違います。まずは短い音声で、何をすると分かるようになるのかを見てみましょう。
この記事では、音声と全文スクリプトがある教材を使い、4つの観点から最初の練習を選びます。正解できなかったという結果だけで終わらせず、文字があれば分かるのか、音声を止めれば分かるのかまで比べてみましょう。そこが見えると、次に同じ量を聞くときも、何を意識して練習するかを決められます。
「読めば分かる」だけでは、音の問題と決まりません
文字なら、途中で止まったり、前の文に戻ったりできます。音声を続けて聞くときは、意味を考えている間にも次の話が進みます。だから、読んで分かることと、その速さで聞いて分かることには違いがあります。
また、単語を拾えても、会議の時刻が変更される会話で「最終的に何時になったか」が分からないこともあります。音だけでなく、提案と決定のつながりも確かめる必要があります。
ここでは、音と単語の対応、語句・文の意味、意味を追う速さ、話のつながりの4つを見ます。複数に当てはまっても構いません。原因を1つに決めるテストではないので、まずは気になった1か所を取り上げ、分からなくなった条件を比べてみます。
音声とスクリプトを用意して、まず聞いてみる
見本に使うのは、British Councilの無料教材Changing a meeting time(会議時刻を変更する会話)です。同じページに音声プレーヤーと「Transcript」があり、Transcriptを開くと全文を読めます。約1分48秒の会話で、教材の表示はA2(Pre-intermediate)です。
最初はTranscriptを開かず、会話を聞いてみましょう。次の2点を、日本語のメモで残してみてください。単語の書き取りと、話の内容を理解できたかは分けて見ます。
- 会議はもともと何時で、最終的に何時へ変更されたか
- 変更をほかの人に知らせるのは誰か
分からなかったところは、空欄のままで大丈夫です。正解を先に調べると、聞き取れたのか、知っている答えを当てはめたのかが分からなくなります。
次に、聞き取りにくかった短い部分を選んでみましょう。選べなければ、冒頭で2人が1回ずつ話すところから始めてみてください。そこをもう一度聞き、聞こえた語を書きます。つづりが出てこないときは、音のメモでも構いません。つづりの間違いだけで、耳で分からなかったと判断しないためです。
ここまで試してからTranscriptを開きます。書けなかった箇所と、読んでも意味が分からない箇所を分けて印をつけてみましょう。全体が難しすぎるときは、冒頭だけを使います。冒頭も知らない語だらけなら、文字で意味を確認できる、もっとやさしい短い会話へ変えて同じ手順を試してみてください。
4つの観点から、追加の確認と最初の練習を選ぶ
1.文字では知っている語が、音では見つからない
スクリプトを見て「あの単語だったのか」と気づいたら、その語を含む短い部分を聞き直してみましょう。文字を見ながらなら、実際の音のどこがその語に当たるか分かるでしょうか。
ここで対応が分かるなら、まずその部分の音と文字を結びつける練習を試してみましょう。文字を見ながら聞く、聞こえ方を確かめて声に出す、文字を隠してもう一度聞く、という順です。自分が覚えていた発音と違ったのか、前後の語とつながって区切りが分からなかったのかも確認してみてください。ルールを一通り覚える前に、今聞こえなかった音を実際の会話で確かめます。
たとえば、この会話の冒頭には「We said 11, didn’t we?」という確認が出てきます。11という時刻を文字では知っていても音では拾えなかったなら、まずこの一部分で、時刻の音がどこにあるかを確かめます。
文字を見ても音の対応が分からなければ、1語に近い短さまで戻します。意味を知らない語も混ざっていたなら、次の確認も必要です。「読めた」という結果だけで、すべてを音声変化の問題にまとめないようにします。
音と文字を照合する練習を詳しく進めたいときは、読めば分かるのに聞き取れないときの、音声知覚の練習を使ってみてください。
2.音は拾えても、語句や文の意味が分からない
知らない語があるときだけでなく、単語は知っているのに、組み合わせの意味が分からないときもあります。この会話では、会議を後へずらす提案と、前へ早める提案が出てきます。「bring it forward」は、ここでは会議を予定より早い時刻にする意味です。1語ずつ知っていても、この意味が分からなければ、時刻変更の方向を取り違えてしまいます。
最初の練習は、分からなかった語句や文を1つ調べ、会話の中で何を言っているか確認することです。そのうえで同じ部分を聞き、音を聞いたときにも意味を思い出せるか試してみてください。文の組み立てが分からないなら、単語を増やす前に、その文の文法を確かめてみましょう。
確認後は、「音を拾えなかった」のか「拾った表現の意味を知らなかった」のかをメモに分けて残します。同じ空欄でも、次に調べるものが変わるからです。
3.止めれば分かるが、続けて聞くと意味が追いつかない
語句や文の意味を確認できたら、1文ごとに音声を止めて、その内容を日本語で短く言ってみましょう。止めると分かるのに、続けて聞くと途中から分からなくなるなら、意味を考える時間がどれだけ必要かを見ます。
最初は、意味のまとまりごとに止めて聞き、そこまでの内容を確認します。「午後か、朝の早い時間に変更できる」「9時にしてほしい」のように、提案から返答へ話がどう進んだかを追ってみてください。それから2人のやり取りを続けて聞き、同じ内容が取れるか試してみましょう。
この練習でいう意味のまとまりは、1語ずつの区切りではなく、提案や返答として意味が取れる部分です。区切った場合と続けた場合を比べることで、どの長さから追いにくくなるかを確認できます。
日本語で確かめるのは、理解と英語で言い直す力をいったん分けるためです。英語で説明できないことだけを理由に、聞いて理解できていないとは判断しません。
4.1文ずつは分かるが、話の関係が残らない
会話を聞いたあと、出てきた時刻は言えるのに、どれが最終決定か分からないことがあります。この場合は、各文の理解に加えて、前の提案に対する返答や、別の予定との関係を確かめます。ここから記憶力が原因だと決めることはできません。
最初の練習は、「元の予定/変更案/決まった予定」の3つに分けてメモを取り、会話の流れを説明することです。スクリプトで関係を確認したあと、提案と返答をセットで聞き直します。つながりが分かる範囲を少しずつ長くし、最後にメモを見ずに話の結末を言ってみてください。
もし1文の意味から曖昧なら、2や3の確認へ戻ります。全体が残らないからといって、すぐ長い音声を覚える練習だけに切り替える必要はありません。
会議の会話で、結果を照合してみる
見本の会話では、会議はもともと11時で、最終的には9時に変更されます。ほかの人へ確認のメールを送るのはAnnaです。途中には別の予定や、採用されなかった時刻も出てきます。
たとえば「時刻の語は聞こえたが、どれが決定なのか分からなかった」という結果なら、単語の聞き取りを増やす前に、提案と返答の関係を見ます。反対に、変更の流れは読んで分かったものの、9時を示す語を音では拾えなかったなら、その短い部分の音と文字を照合します。
正解の数だけでは、この違いは見えません。何を確かめたら分かったかまで残すと、次の練習を選べます。
書き取りを続けたい場合は、ディクテーションの書き取り・照合の手順も参考になります。ただし、この確認では全部を正確に書くことが目的ではありません。聞こえた語と、理解できた内容を分けて見てみましょう。
練習後は、同じ音声と初めての音声を分けて見る
選んだ練習を試したら、同じ音声をスクリプトなしで聞いてみましょう。前に拾えなかった語が聞こえたか、変更の流れを説明できたかを比べます。
同じ会話が分かるようになっても、内容を覚えたことで答えられた可能性はあります。そこで、次は同じ教材サイトなどから、長さや難しさが近い初めての音声を選び、同じ確認をしてみてください。同じ音声でできたことと、新しい音声でもできたことは、別に記録しておきましょう。
変化が見えないときは、練習量を増やす前に、選んだ箇所へ戻ります。文字でも意味が曖昧なまま音だけを繰り返していなかったか、短く区切れば分かるのに全体ばかり聞いていなかったか。最初の見立てと、試した練習が合っているかを確かめます。
変化を見るときは、何カ月たったかだけでなく、以前分からなかった部分が、どの助けなしで分かるようになったかを残します。文字なしで語を拾えた、止めずに返答まで理解できた、という変化なら、次に試す範囲を決められます。同じ期間練習しても、使う音声や最初に難しかった箇所は人によって違うので、ここでは「何カ月で聞き取れる」とは決めません。
「聞き取れない」を、次に確かめられる形にする
「リスニングが苦手」のままだと、教材や練習法を選んでも、それが今の困りごとに合っているか分かりません。「時刻は聞こえるけれど、変更案と決定を区別できない」まで分かれば、次はそのやり取りを確かめられます。
まずは見本の音声で、分からなかったところを1つ残してみてください。その1か所を、文字を見て、短く止めて、前後をつなげて確かめてみましょう。分からなかった音声が、次の練習を選ぶ材料になります。

