単語帳を開く。
3ページ進んで、閉じる。
昨日覚えたはずの語が、もう出てこない。
「これ、何周すれば覚わるんだろう」
心当たりはありませんか?
覚えられないのは、記憶力の問題ではありません。単語を、意味だけで切り離して覚えているからです。
人の記憶は、状況とセットのときに残ります。だから絵と文がついた英語を読むほうが、単語帳より定着します。ここではその仕組みと、教材の選び方を整理します。
なぜ絵があると残るのか
“apple”を「リンゴ」と覚えるとき、頭の中では英語→日本語→意味という順に処理しています。
絵があると、この真ん中が消えます。英語から直接、意味へ届くようになります。
たとえば “The cat is on the chair.” という文に、猫が椅子に乗っている絵が添えてあるとします。“on” を「〜の上に」と訳さなくても、位置関係がそのまま入ってきます。
この「訳さずに分かる」状態を積み上げることが、多読の目的です。単語の数を増やすことではありません。
多読が効く条件は、レベルの一点だけ
多読は、教材のレベルが合っていないと成立しません。目安は次のとおりです。
1ページに、知らない単語が1〜2語まで。
知らない語が3語を超えると、読むより推測する時間のほうが長くなります。そうなると多読ではなく精読になり、量が積み上がりません。
「簡単すぎるのでは」と感じるくらいが適正です。すらすら読めるからこそ、量をこなせます。
守ることは3つだけ
- 辞書を引かない|引いた時点で、読む速度が止まります。
- 分からないところは飛ばす|1語の意味より、話の流れを優先します。
- つまらなければやめる|合わない本を我慢して読むと、続きません。
この3つは、多読を提唱してきた人たちが繰り返し言っていることです。どれも「読み続けるため」の約束事です。
1日5分で足りるのか
正直に書きます。5分は、語彙が増える量ではありません。
5分でできるのは、習慣を作ることです。机に向かわなくても開ける、という状態を先に作る。そこから15分、30分と伸びていきます。
多読で語彙が動き始めるのは、冊数が積み上がってからです。1冊が数十語の絵本なら、10冊読んでも数百語にしかなりません。
だから「5分でいい」ではなく、「5分から」です。この違いを最初に知っておくと、伸びない時期に自分を責めずに済みます。
多読で伸びるもの、伸びないもの
多読は万能ではありません。何が伸びて何が伸びないかを、先に分けておきます。
| 伸びるもの | 伸びにくいもの |
| 見て意味が分かる語(再認) | 自分から使える語(産出) |
| 読む速度 | 発音・聞き取り |
| 語順の感覚 | 文法の説明ができる力 |
| 英語への抵抗感が減る | 試験のスコア(直接には効かない) |
右の列は、多読とは別の練習で埋めます。読めた語がそのまま話せる語になるわけではありません。使えるようにするには、口に出す工程が別に要ります。
音の面が気になる場合は、「読めばわかるのに聞き取れない」大人のためのリスニング「音声知覚」3ステップを読んでください。読めるのに聞き取れないのは、多読では埋まらない部分です。
教材の選び方
初心者向けの、絵と英文がセットになった教材は複数あります。代表的なのは次のようなものです。
- Oxford Reading Tree(オックスフォード・リーディング・ツリー)|英国の小学校で使われてきたシリーズ。レベルが細かく分かれています。
- Raz-Kids(ラズキッズ)|レベル別の電子図書館。音声付きで読めます。
- 英語絵本の読み聞かせアプリ|スマホで完結するので、通勤中にも開けます。
どれを選ぶかより、「1ページに知らない語が1〜2語」のレベルから始めることのほうが重要です。背伸びした1冊より、簡単な10冊が効きます。
図書館の児童書コーナーでも代用できます。まず1冊、最後まで読み切れるものを見つけてください。
まとめ|多読は語彙の入り口であって、全部ではない
- 絵があると、英語から直接意味へ届く。訳す工程が消える。
- レベルの目安は「1ページに知らない語が1〜2語」。簡単すぎるくらいでよい。
- 辞書を引かない・飛ばす・つまらなければやめる。読み続けるための3つ。
- 5分は習慣を作る単位。語彙が動くのは量が積み上がってから。
- 読める語と使える語は別。話す練習は別に要る。
学習の順番そのものを整理したい場合は、英語勉強法は「順番」が9割。SLAが導く大人のための4ステップで全体像を確認してください。多読をどこに置くかが決まります。
ゼロから積み上げた実際の進み方は、英語をゼロから始めて3カ月で脱初心者→中級者になる方法【実録】にまとめてあります。


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