音は拾えている。
単語も聞こえた。
なのに、話が終わると内容が残っていない。
「え、いま何の話だったっけ」
会議のあとで、そう思ったことはありませんか?
これはリスニングの問題ではありません。音を追うことに手一杯で、意味を保っておく余裕がない状態です。
音は追えるのに内容が残らない。この段階で使うのが、通訳の世界で使われてきた2つの練習です。ここではその中身と、シャドーイングとの違いを整理します。
リプロダクションとは何か
リプロダクションは、英語を聞いて、聞いた内容をそのまま英語で言い直す練習です。日本語に訳しません。メモも取りません。
やることは3つだけです。
- 1文(慣れたら2〜3文)を聞く
- 音声を止める
- いま聞いた内容を、英語で口に出す
一字一句を再現できなくて構いません。目的は暗記ではなく、意味を保ったまま口に出せるかを見ることです。
やってみると、たいてい途中で消えます。文の後半だけ残って前半が消える。単語は覚えているのに文の形にできない。この「消えた場所」が、いま処理が追いついていない部分です。
シャドーイングとの違い
どちらも聞いて声に出す練習ですが、通っている道が違います。
シャドーイングは、聞こえた音を音のまま追いかけます。意味を理解していなくても、口はついていけます。だから音を認識する速度が上がります。
リプロダクションは、音を意味に変えないと口に出せません。意味に変換できなかった部分は、そこで消えます。
つまり、シャドーイングは音の練習、リプロダクションは意味の練習です。
| 練習 | 止めるか | 鍛えるもの | 使いどき |
| シャドーイング | 止めない | 音を認識する速度 | 音が追えない |
| リプロダクション | 止める | 意味の保持と再生 | 音は追えるが内容が残らない |
| サイトトランスレーション | 文字を読む | 語順のまま処理する力 | 戻り読みの癖がある |
音のほうがまだ怪しい場合は、先に【決定版】シャドーイングのやり方完全ガイド|5ステップで「音マネ」を卒業するを回してください。順番を逆にすると、どちらも中途半端になります。
サイトトランスレーションとは何か
サイトトランスレーションは、英文を読みながら、頭から順に意味を取っていく練習です。文字を見て行います。
日本語の語順に組み替えません。英語の語順のまま、意味のかたまりごとに前から処理します。
→ 会った、その取引先に / 大阪から来た / 新しい契約の話をするために
訳文としては不格好です。ここで作っているのは訳文ではなく、前から処理する癖です。
学校で身についた「後ろから戻って訳す」やり方は、読むときには使えても、聞くときには使えません。音声は戻ってくれないからです。
戻り読みが残っている限り、リスニングは語順の壁で止まります。サイトトランスレーションは、その癖を外すための練習です。
どれを選ぶか|詰まる場所で決まる
3つとも回す必要はありません。自分がどこで止まっているかで決めます。
- 音が拾えない、単語の区切りが分からない|シャドーイングとディクテーション。
- 音は拾えるが、内容が残らない|リプロダクション。
- 読めば分かるが、聞くと語順で混乱する|サイトトランスレーション。
どこで詰まっているかの切り分けは、【決定版】ディクテーションのやり方完全ガイド|5ステップで「聞こえない音」を潰すが使えます。書き取ると、音の問題か意味の問題かがはっきり分かれます。
シャドーイングとディクテーションのどちらから始めるかは、【徹底比較】シャドーイングvsディクテーション「どちらをやるべきか」をSLAで完全解説で切り分けています。
始め方と、続ける長さ
リプロダクションは、1文から始めます。最初から3文でやると、記憶力の勝負になってしまいます。
- 教材は、辞書なしで8割意味が取れるもの
- 1回15分。長くやるより、間を空けて何度も
- 言えなかった文は、スクリプトを見てその場で口に出す
サイトトランスレーションは、まず区切りを入れるところからです。意味のかたまりごとにスラッシュを入れ、前から声に出して意味を言います。慣れたら、区切りを入れずに読みます。
どちらも、3か月続けて「聞いたあとに内容が残る」感覚が出てくれば効いています。1週間では変わりません。
なお、リプロダクションは記憶力の訓練ではありません。覚えられないのではなく、意味に変換できていないだけです。ここを取り違えると、練習が苦行になります。
この2つでも埋まらないもの
どちらも一人でできる練習ですが、届かない範囲があります。
- 自分の英語が正しいか|リプロダクションで口に出した文が自然かどうかは、自分では判定できません。
- 会話の速度|相手のいるやりとりには、間の取り方や聞き返しが必要です。
- 知らない語彙|意味に変換できないのが語彙不足によるものなら、練習の前に単語が要ります。
リスニングが伸びない原因が音の処理より手前にある場合もあります。原因の切り分けと、独学・オンライン英会話・コーチングの使い分けはリスニングが伸びないときに変えるべきもの|独学・オンライン英会話・発音コーチングの使い分けにまとめてあります。
まとめ|音の練習と、意味の練習は別物
- リプロダクションは、聞いた内容を英語のまま言い直す練習。消えた場所が、処理の追いつかない場所。
- シャドーイングは音、リプロダクションは意味。通っている道が違う。
- サイトトランスレーションは、英語の語順のまま前から処理する癖をつける練習。
- 選ぶ基準は「どこで詰まるか」。3つとも回す必要はない。
- 変化が出るのは3か月単位。1週間では判断できない。
学習全体のどこに置くかは、英語勉強法は「順番」が9割。SLAが導く大人のための4ステップで確認してください。


コメント